田辺市のふるさと納税返礼品69商品に 特産品を全国にPR |
田辺市への「ふるさと納税」が急増している。
制度が始まった2008年度は年間21件、09年度は14件だったが、寄付してくれた人に返礼品を贈るようになってからは一気に増加。
14年度は7138件、7600万円、15年度は7947件、8587万円となり、市の貴重な自主財源になっている。
正式には「ふるさと田辺応援寄付金」。
この寄付があると、田辺市は返礼品として地元産品を地元企業や生産者から買い取り、寄付者に送る。
この仕組みを利用すると、自由に使用できる財源が確保できるし、地域のPRもできる。返礼品に選ばれた地元業者にも自社製品の出荷量が増える利点がある。
寄付した人も、自己負担額2千円を除く全額が税金の控除対象となり、節税効果が期待できる。
3者の思惑を生かすため、田辺市は2014年度から1万円以上を市外から寄付してくれた人への返礼品に白干し梅(7キロ)を取り入れた。
反響は大きく、同年度は7600万円の寄付が集まり、47都道府県に白干し梅を送った。
15年度からは5万円以上寄付した人に、熊野古道の語り部と市内宿泊をセットにした「旅行商品」を加えた。寄付者に田辺に足を運んでもらうことで、地域の魅力を実感してもらいファンを増やそうという狙いがある。
同年度の寄付は8587万円に上り、過去最高を記録した。
16年度は返礼品メニューに梅酒や温州ミカン、干物、熊野牛などを追加し、梅干しや旅行プラン、海産物など計69商品になった。
いずれも市の代表的な特産品で、制度を通じた全国へのPR効果が期待されている。紀伊民報も加わり「ふるさとの情報提供」の役目を担っている。
担当する市たなべ営業室は「田辺の産品を知ってもらうことに意味がある。産品が気に入ってもらえれば、購入にもつながる」。
市商工振興課も「自社の商品を市外にアピールする絶好の機会。
それぞれの事業所は、返礼品に選ばれたのを機会に商品価値の向上や販路拡大につなげてもらいたい」と話している。
田辺市の「ふるさと納税」寄付金の活用法は、大きく分けて「世界遺産関連」「環境保全」「ふるさとづくり」「安心のまちづくり」「南方熊楠・植芝盛平顕彰」の五つがある。
15年度に最も多かったのは「世界遺産関連」で、2377万6101円(2302件)。
市はこの寄付金を熊野古道沿いの多言語案内看板や小雲取越整備、世界遺産追加登録候補地、潮見峠への公衆トイレ設置などに充てた。
その他の寄付と主な充当事業は次の通り。
「環境保全」1074万9902円(999件) 自然観察教室など
「ふるさとづくり」818万2101円(764件) 田辺祭補助金など
「安心のまちづくり」583万4800円(451件) 災害用備蓄品の購入など
「田辺市出身の偉人顕彰」241万3千円(233件) 南方熊楠賞運営委託料など
「指定なし」3491万9816円(3198件) 小中学校へのパソコン配備、図書館図書の充実など
※本年度は熊野古道の修繕やとがの木茶屋の再生、吉野熊野国立公園の保全管理、道路・水道などの生活基盤整備、住民バスの運行などに活用する予定という。
全国的に見ると、生徒数の減少で存続の危機にある高校の支援や、ひきこもりや不登校、障害者が集うグループホームの創設に寄付を呼び掛ける事例もある。
このように各自治体が「返礼品」と「活用法」に工夫を凝らす中、今後は寄付を募るだけでなく、寄付してくれる人の共感が得られる活用法をどのように提示できるかがポイントになりそうだ。


熊野古道体験で語り部を務める真砂充敏市長(右) 2015年2月、田辺市中辺路町の滝尻王子で |

2008年度に始まった制度。寄付額の2千円を超える部分が所得税と住民税から減税される。
申告しなくても税控除を受けることができる「ワンストップ特例制度」もある。
寄付を受けた自治体が地元の特産品などを「お礼」の特典として用意することが多く、ある種のブームとなっている。

15年度に田辺市への寄付件数が最も多かったのは、東京都在住者で1429件。
続いて神奈川県787件、大阪府763件だった。市内を除く県内は107件。
全47都道府県から寄付が届いている。
愛知県(593件)や兵庫県(543件)など都市圏の県が上位を占める。
意外と多いのが北海道(236件)。東北では宮城県(121件)が突出して多かった。